安倍政権は最低賃金引上げを重点政策の一つに掲げ、ここ数年高めの上昇率を実現してきました。安倍首相は2015 年11 月に毎年3%程度の引上げに向けた環境整備を、2016 年7 月にも3%引上げに最大限努力するように経済諮問会議で関係閣僚に指示しました。
全国平均の最低賃金は2012 年以降4 年連続で前年比引上げ額が拡大していましたが、政府の意向を受けて2016 年は25 円増と、1991 年以来の高い伸びを記録しました。
しかし、依然としてわが国は国際的には低い水準です。
日本の時給が2016 年の引上げ後も平均で823 円にとどまるのに対し、ドイツ、フランスなど主なヨーロッパ諸国では1,000 円を超えており、主要先進国のなかでは最低の水準にあります。国際的にみれば、国民生活水準の底上げに向けて、さらなる引上げが求められていると
いえましょう。新たに掲げられた「一億総活躍社会」の実現のためにも、注力すべき政策といえます。
最低賃金の引上げは、かつては企業の支払い能力を考慮して決定されていた時代がありました。次には、生活保護と最低賃金との逆転現象が解消された時代がありました。そして今は、デフレ脱却につながる経済好循環のための賃金底上げを根拠とする時代に入ったということ
ができるでしょう。
今後のわが国の雇用情勢を展望すれば、労働者人口の減少から人手不足の状態が続くと予想されます。業界の最低賃金引上げが求人の面においても看過できない課題であるといえます。
一方で賃金引上げによる企業側のコスト増を、収益の増加で吸収するには、賃金の原資となる生産性が持続的に向上するような、取り組みが不可欠です。
その一つの方法として、「働きやすく定着率の高い職場」、「生産性を高めるための業務改善」などの「労働環境改善」が必要と言えます。